冷酷な騎士団長が手放してくれません
――ピカッ!!!


再び、闇に沈む森に閃光が弾けた。


ゴロゴロと唸りが鳴り響く中、まるでソフィアの疑念に答えるかのように、アダムが立ち上がる。


そして、御者席からひらりと馬に飛び移った。


闇間に、アダムの掲げたナイフが妖しく光る。雨の降りしきる中、アダムはそのナイフを馬車と馬とを繋いでいる革紐に振り下ろした。







山道を全速力で駆けている馬車は、断崖絶壁に差し掛かっていた。バランスを崩そうものなら、あっという間に谷底に落下してしまう切り立った崖だ。

「アダム……。一体何をしているの……!?」


ソフィアの声に、再びナイフを振り上げたアダムが視線をこちらに向けた。


弾けた閃光が、彼の冷え切った眼差しを闇に浮き彫りにする。まるでソフィアを責め立てるようなその目は、真っすぐにこちらを睨んでいた。


「あなたが、悪いのです」


――ザクッ!


革紐を、一本一本確実に断ち切っていくアダム。この箱馬車が馬から外れてしまえば、すぐに山道を急降下してあっという間にソフィアももろとも崖から落ちてしまうだろう。


「あなたが、十年前に彼を助けさえしなければ――」


(十年前……?)






アダムが、何を言っているのかソフィアには分からなかった。


彼がソフィアの敵であったということと、これから彼女を殺そうとしていることを認識するだけで、精一杯の状態だ。
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