冷酷な騎士団長が手放してくれません
「アーニャ、どうかした?」


「……いいえ」


アーニャの声に湿り気を感じたソフィアは、はっとする。


「アーニャ、泣いているの……?」


「泣いてなどいません」


アーニャはソフィアから顔を背けると、逃げるように部屋の入口まで下がった。


「では、晩餐会の時刻になりましたらお迎えに上がりますから。それまで、しばらくこのままでお待ちくださいませ」


――パタン。


扉が閉まり、アーニャの足音が遠ざかる。


妙なモヤモヤが、ソフィアの胸の奥に広がっていた。
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