冷酷な騎士団長が手放してくれません
――――リアムが振り上げた剣がダンテの頭上をかすめ、ダンテは尻餅をつく。


「リアム様、降参でございます」


ダンテがリアムにひれ伏せば、見物中の娘たちから黄色い歓声が上がった。


息を切らしたリアムは剣を腰に下げた鞘にしまうと、手の甲で顎にしたたり落ちた汗を拭う。


流れた視線が、ふとこちらを向いた。


すぐにソフィアに気づいたリアムが、こちらへと近づいてくる。






ソフィアの前に群がっていた娘たちが、驚いたように道を開ける。


自分に夢中になっていた娘たちには一目もくれずに、リアムはソフィアの前で足を止めると、片膝をついた。


「ソフィア様。いらっしゃっていたのですね」


リアムは、いつだろうとどこだろうと、ソフィアを見つけて駆けつけてくれる。


「ええ。あなたに、会いたくて」


右手を伸ばし、ソフィアはリアムの頬に触れた。


伏せられた睫毛が瞬き、深海のように青い瞳がソフィアを見上げる。








――美しく賢く、そして忠実な私の下僕。
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