恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「もうそんなに自分を責めるな。全てはおまえの勘違いだったんだから。な?」と優しい声と表情で、岸川さんに言われた私は、また目に涙を溜めながら、「・・ぅん」と言って頷いた。

・・・10年前のあの夜、本当は岸川さんと体の関係がなかったと知ったおかげで・・そして、優しくて温かな岸川さんの心に包まれていると実感するたびに、私の心の傷が少しずつなくなっていく。
身持ちの悪い、ふしだらな女であるという思い込みは、それから罪悪感という名を持つようになり、私の心の傷となって、10年もの間、私の一部となってずっと居座っていたのに。
やっぱり、どういう形にせよ、岸川さんとはいつか再会しなければならなかったのかもしれない。
私が、本当の人生を歩むために。

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