恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
そのとき私は、もし・・・仮に、岸川さんのことを知っていったとして、それから私たちの関係はどうなっていただろうかと、ふと思った。
私は大学に通うために長野に行ってたんだ。それ以上の仲に発展していたとは、とても思えない―――。

母の家(実家)のすぐそばに立っていた誰か――男性――が、私たちの話し声か足音を聞いたのか、こっちにふり向いた。
途端に、さっきまでウキウキしていた私の気分は、たちまちしぼんでしまい、「近づいてはいけない」という条件反射に従うかのように、自然とその場に立ち止まっていた。

「・・・そうすけさん」

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