恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
醜い、別れ
「・・あっ、翔!」

「待って!」と私が言うよりも早く、息子の翔は私の手を振りきって、「パパーッ!」と嬉しそうな声を上げながら、主人のところへ駆けて行った。

・・・やっぱり、翔はパパに会えて嬉しいんだよね。
でも私は・・・会えて嬉しいとは思わない。けど、安心はした。
やっと来てくれたというホッとした気持ち。
そして、これで主人との結婚生活にケリをつけることができるという安堵感・・・。

私は一度深呼吸をして心を落ち着かせると、意を決して一歩ずつ、歩を進めた。
主人と息子が一緒にいる、実家のすぐ近くの方へ―――。
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