恋よ、来い。 ~傷心デレラの忘れもの~
「確かにそれは嬉しいですよね」
「ああ。ある先生は、“学校に行くのが楽しみです”というメッセージを寄越してくれた。“僕も岸川先生が設計したような、ステキな学校を創りたいです。どうもありがとうございました”と書いてくれたのは、建築家を目指している盲目の生徒さんだと聞いて、俺、すっげー感動して・・・。ぶっちゃけ俺、一時は建築の仕事を辞めようと思ってたんだ」
「えっ?」
「だけど生徒さんや先生たちから、こういった感謝のメールをもらって、俺、この仕事を続けて良かったって心から思った。そしてこれをきっかけに、“誰の”“何のために”家やビルを設計するのかという、いわば建築家としての原点っていうのかな、それがぶれない限り、俺はこの仕事を続けると、改めて自分に誓った。もちろん俺自身、十分満足がいく学校を創ることができたし、学校側ももちろん満足してくれているという点でも気に入ってる物件だが、何より俺にとってこの仕事は、ターニングポイント的ってぇか、俺を前に押してくれた役割を果たしてくれたから」と言う岸川さんに、私は2・3度頷いて「分かります、岸川さんの言いたいこと」と言った。
< 437 / 483 >

この作品をシェア

pagetop