君は心を開かない
舞は何かとてつもない秘密を抱えているのではないか。

「人間は汚らわしい…か。」

舞は人間じゃないのか。ついでに彼も。

不思議と私はその事実に取り乱すことはなかった。このことは舞の秘密であるに過ぎない。なぜか冷静に私は考えていた。

「秘密を抱えてるのは、私も同じだしね。」

あの時のことを思い出しながら、私は一筋の涙を流す。

不意に後ろから肩を叩かれる。

振り返ると、ニッコリ微笑む舞がいた。

私の涙を見るなり、驚いたような顔をして、ゆっくり口を動かした。

“ど う し た の?”

そう言っているようだ。

「なんでも、ないよ…。」

そう強がると、堰を切ったように涙が溢れた。

舞は私の止まらぬ涙をしばらく見つめていた。

私の体がふんわりと包まれた。

私は舞に抱きしめられていた。

「朝比奈さん…?」

なぜか、安心感に包まれた。

しばらくして舞は私から離れる。

そして、いつものようにスケッチブックを取り出し、こう書いた。

『なにか悩んでるなら、聞くよ?』

「ありがとう…。」

明里にしか話したことのない私の秘密。

それ以外、誰にも話す気はなかった。

それなのに、舞に話す気になった。

とても、話したいと思ったのだ。
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