ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
鬼社長は、私の前だと可愛くなる
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五月中旬。社屋の三階の窓際の席で、私はノートパソコンに向かいひたすら数値入力を続けている。
派遣社員としてこの会社に勤めるようになり、ひと月ほどが経過した。
どこの会社もそうだと思うが、派遣社員に与えられる業務は単純なものばかりでつまらない。
けれども、難しいことを要求されても応えられないだろうし、つまらないということに文句はない。
広々としたオープンスペースは、総務部と営業部の二部署で住み分け、パーテーションで区切られている。
営業部の社員の出入りは激しく、電話も頻繁にかかってくるのに対し、私が配属された総務の三十数名は黙々とデスクワークをこなしているだけで静かだ。
時刻は十二時になろうというところ。
座り続けての伝票整理に、関節が痛みを覚えていた。
色気もないのに無駄に大きなこの胸のせいで、肩も凝って仕方ない。
ああ、体を動かしたい……と私は机の下でこっそりと膝を曲げ伸ばし、凝った首を回す。
肉体労働の方が性に合うけれど、上京してきた五年前、建設作業員を募集していた四社に女だという理由で断られたから仕方ない。
それで派遣会社に登録し、そこから紹介された職場で事務的な仕事をしている。
産休育休代理の、短期契約のところが多く、この会社は一年契約で五社目だ。
それについても文句はなく、就職難のこの時代に、東京で暮らしていけるだけの給料をもらえることに感謝しなければ。
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