ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
なるほど。そりゃ、ガックリくるのも無理はない。

彼としては意を決して告白したつもりが、相手は告白の意味さえ理解していなかったのだ。

あの日の緊張や、頷いてくれた時の喜びを返せと言いたくなるだろう。


白大理石の廊下の床に、人差し指で不思議な模様を描きながらいじける彼は、ぶつぶつと独り言のように文句を呟く。


「だから夕羽ちゃんは、俺がおっぱい触ったら困った顔で拒否してたのか……。てっきり、肉体関係はまだ早い。時間をかけろという意味かと思って、我慢してたのに……」


そうだったんだ。それは悪いことをしてしまった。

でもね、そうは言うけど、よっしーは結構ボインボインと触ってたよ?

そこに遠慮や我慢はなかったような……。


「二十九にもなって、中坊の頃みたいに性欲と戦うのは悲しかった……。夕羽ちゃんは無邪気で奥手なんだと思ったり、もしや、かまととぶってる性悪猫かと怪しんだり……」


おいおい。悶々と悩ませ苦しませたことは反省するけど、そんな言い草はないでしょう。

誰が、かまぼこ食ってる昭和のタコだ。

うちは漁師だから、かまぼこを手作りする時もある。

いつか機会があれば、絶品かまぼこと、獲りたて茹でたての水ダコを食べさせてあげよう。

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