ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
今さらながらに驚きつつ、左右に庭園を眺めて、緩やかにうねる舗装路を徐行で進む。

数分も走ってから、ようやく良樹が「母屋が見えてきた」と指差した。

松の木立の向こうには、純和風の立派な平屋の屋敷が見える。

高級旅館のような佇まいの建物は荘厳で、庶民を寄せ付けないような威圧感を覚える。


そういえば……と再び心に思う。

実家でパーティーと言われた時にすぐに気づくべきだったが、もしや彼の両親も参加するのだろうか……?


心構えのないままに、彼の両親とご対面するのは勘弁してほしい。

「誕生会は母屋でするの?」と恐る恐る尋ねれば、「違うよ」と言ってもらえる。

よかった。それなら、友人のみということでいいんだよね……たぶん。


私が緊張を解いたら、リムジンは母屋の前を通り過ぎ、裏手へと進む。

そこにも和風の屋敷が数棟と、お宝が眠ってそうな白塗りの外壁の蔵があるが、車はそれらを通り越してまだ奥へと走る。

三門家の敷地はどこまで続くのかと、驚きが続く中で、景色は急に和から洋へと変わった。


芝生の美しいフランス風の庭園の奥に建っているのは……城?


建築様式などはわからないが、子供の頃にテレビアニメで見たような、中世ヨーロッパ風の建物が目に映る。

二階建ての白い石造りで、近づくにつれて壁や柱に施された彫刻の見事さがよくわかる。

二階のアーチ型のバルコニーは、今にもマリーアントワネットが現れそうな雰囲気であった。

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