ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
落ち着いた気持ちでポケットから取り出したのは、スマホだ。

さて、良樹にゆっくりとメールを……と思ったが、ホームボタンを押した途端に、私は驚き目を見開いた。

メールの未読が百五件、電話の着信が五十二件って……どういうこと?

まさか味噌が染みて、壊れてしまった?


故障を予想しつつも、不在着信をざっと確かめれば、全て良樹からのものだった。

膨大な件数のメールは、今すぐに全てをチェックするのは無理だけど、これらもきっと彼からのものであろうと推測する。

最後に送られてきたメールを開けば、こんな文面が現れた。


【君は俺を受け入れるしかない。諦めろ。どこへ逃げても、地の果てまでも追いかける】


え……なにこれ、脅迫?

壊れたのはスマホじゃなくて、良樹なの?


出張先で毒キノコでも食べてしまったのかと彼を心配した時、「夕羽ちゃーん!」と私の名を呼ぶ彼の声が聞こえた気がしてハッとした。

慌てて周囲を見回すが、変わらず人影はなく、波が打ち寄せるだけの平和な波止場に、緊張を解きかける。


なんだ、気のせいか。

耳に聞こえるのは自然の音と、ヘリのプロペラが回転する音だけで、他にはなにも……ん? ヘリコプター?
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