ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
「夕羽ちゃん……迷惑に思ってたの?」

「よっしーは優しい奴だよ。子供の頃、釣り餌のゴカイを針につけられなかったし、釣りたてピチピチのヒラメを私が捌こうとしたら、可哀想だってうるさくて。でも刺身にしたら、こんなに新鮮で美味しい魚は初めてだって喜んでたんだよ」

「俺って、情けない奴だな……」


後ろでテンションが急降下した弱々しい呟きが聞こえたが、それに構ってあげずに私は熱く、墓に向けて訴える。


「おじいちゃん、聞いてくれてる? 孫可愛さにどうか許して。今は厳しければ、下が歯を食いしばってついてくる時代じゃないし、やり方を変えさせておくれよ。よっしーらしい経営を」


ここは神社じゃないけれど間違えて柏手を打ち、「お願いします。この通り!」と大きな声で頼み込んだ。

すると林の方からカラスが一羽飛んできて、三門家の墓石の上に止まる。

お供物を狙ってきたのかと思ったが、カラスは私を見つめて首を左右に傾げ、声の調子を確かめるように高音と低音でひと声ずつ鳴く。

それから「オーケー」と変わった鳴き方をした。


目を瞬かせた私は、カラスの真っ黒な瞳と見つめ合ったまま、後ろの彼に話しかける。


「よっしー、OKだって。おじいちゃんが、やり方を変えてもいいと言ってるよ」

「そんな、馬鹿な……」


振り返ると、彼は唖然としてカラスを見ていた。

端正な顔の半開きの口元だけが間抜けて見えて、思わず私はプッと吹き出す。


カラスはまた鳴いたが、今度はカラスらしい声だ。

用が済んだとばかりに黒い翼を広げ、晴れ渡る夏空へと優雅に高く飛び去った。

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