五十夜美咲事件帳 No.000【男スポ作品】
「え~。先にもご説明させていただきましたが、昨日の深夜、ここのオーナー兼シェフの片桐一夫さんが亡くなりました」

「はぁ……で、なぜ我々だけがここに呼ばれているのでしょうか? 別段肉親というわけではありませんし……」

 そうさっそく疑問の声を上げたのは長内さん。

「はい。そうですね。ただ、大変申し訳ないのですが、皆さんに2、3お聞きしたいことがありまして──」

「? どういうことですか? まさか……」

「あたしたち疑われちゃってるんですか!?」

 彼女たちが怪訝な顔をするのも無理ありませんよね。

 だってわたしも事故だと信じて疑いませんでしたし、仮に内部犯だとしてなぜこのメンツなのかがよくわかりません。 

 厨房内がいかばかりか不穏な空気に満たされ、全員の視線が警部補に集められます。

 すると警部補はそれを気にする風もなく、右手で左の頬を掻きながら淡々と話し始めました。

「まず最初にはっきりと申し上げますと、私は本件を──殺人であると断定しております」

 ざわり、と色めき立つ4人。

 五十夜警部補はその反応をじっくりと眺めると、続けて、

「何故なら、これを“事故とするには無理がある点”がいくつかあるからです」

 そうなんです。

 考えてみればそれはとても単純なことでした。

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