天使は金の瞳で毒を盛る
そう、そんな感じだった。なんだか今となっては笑っちゃうなあ。狭い世界でみんな本気で競ってた。

あれからもう、何年?10年?

今は本物の社会を相手に戦っているわけで。

それにしても、群城先輩がグループのトップの立つのはいいとして、あれだけ目立っていた榛瑠は 今は一企業の課長だ。

それを考えるとモヤモヤとしてしまう。行くの嫌だと思っても当たり前というか。

榛瑠は多分本当に面倒なだけで、気にしてない気がするけど。

もちろんみんなが皆、成功してるわけではないし。でもね。

神様は理不尽にできている。

紙コップを自販機の横に置いてある専用のゴミ箱に捨てる。カコッっと乾いた音がした。

まあね、私なんてもっと冴えないけど…。

そんな私でもお嬢様ってだけで大きな顔できちゃうんだから、考えてみたらひどい話…。

そこで、気づいた。

彼は私と結婚できればそこらへん全部解決なんじゃい?実力はあるわけだし。

いや、わかってたけど、わかっていたはずだけど。

彼にとって、私はチャンスを体現しているのではないの?

私は立ち尽くした。どうして気づかなかった?いや、わかってたはずなのに、どうしてそこに私は愛だの恋だの介在させようとした?

私は、あらゆる贈り物をもって生まれ出たとしか思えない人が、唯一持っていないものを持っている。

そして、私はそれを与えることができる。

今初めて、私は自分の持つものの意味を知った気がした。
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