天使は金の瞳で毒を盛る
資料室の密会
その気づきは私をむしろ憂鬱にした。

だって、私にとってはあくまで恋の話だったのだから。

片思いの夫婦なんて冗談にもならない。それだけは絶対いや。

榛瑠が私を好きになれば全面解決なのよ。本当に。なのにはぐらかすし。

もう、この際嘘でいいから好きってことにしてくれないかしら。うまく騙してくれるならそれでいいから。

…いや、それではあんまりプライドが無いというか、何にもならないよ、一花。

でも、私は私が持つであろうものを彼に渡したい。そこは本当にそう思うから。

あー。私が折れればいいの?そうなのかな?でもでも。

そんな考えが重い頭にグルグルしていて、なかなか仕事が進まない。

そんな私を知ってか知らずか、その日の午後、林さんが声をかけてきた。

「勅使川原さん、この書類資料室へ持って行って片付けておいてくれる?」

見ると、ダンボール三箱分に分類された書類がぎっちり入っている。

え、これだけ私一人で?

「急ぎの仕事があればいいけど」

「いえ、無いです…」

「あ、一花先輩、私手伝いますよ?この書類終わらせれば急ぐものないですし」

横から篠山さんが言ってくれた。

「ありがとう、でも、大丈夫」

「じゃ、お願いね」

林さんの言葉に急かされダンボールを台車に乗せると、資料室に運び込んだ。それにしても、紙ってなんでこんなに重いかなあ。

それでも、こんな風に仕事の能率が落ちている日はむしろこんな肉体労働のほうがありがたいくらいだ。
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