天使は金の瞳で毒を盛る
……榛瑠、あなたに伝えたい。

好きとか、愛しているなんていうことより、もっともっと、遠く、強くあなたに伝えたいことがある。

私は彼の首に両腕を回して抱きつきついた。

榛瑠が受け止めてくれる。

「あのね、榛瑠」

「ん?」

「あのね、えっとね、ここにいてくれてありがとうね」

「お嬢様?」

「ずっと昔のあの時、我が家に来てくれてありがとう」

それはきっと偶然のような必然で。あの時から何もかもが始まったのだ。

ううん、違う。もっと前から全部決まっていて、それは、もう、きっと奇跡みたいなもので。いいことも悪いことも全部。

榛瑠が私を抱きしめる腕に力が加わる。包み込まれる。もう、子供の腕ではない。でも。

「あなたが、変わらずあなたのままでいてくれて、とても嬉しい」

あの光を失うことなくいてくれてとても嬉しい。

「私の人生にあなたをありがとう」

「一花」

甘い声で囁いて、榛瑠が私を強く抱きしめる。私も彼をぎゅっと抱きしめる。

嬉しくて、嬉しくて。だから。

「うん、いざとなったら、イヤになったらアメリカでもどこでも行っちゃっていいよ」

彼は私の腕をほどいて顔を見る。

「あのね、なんでそうなるの?」

「え、だって、この世界のどっかにできれば元気でいてくれれば最悪いいかなって。どうしてもの時の話よ」

榛瑠は笑った。

「お気遣いありがとう。でも、今はあなたの側が一番居心地いいんだけどね」

そう言って私にキスをする。

「あなた自身が私にとってはギフトだよ。一花」

彼はまたキスをした。そうやって二人でクスクス笑い合いながら何度も何度もキスをする。


私たちは奇跡の続きを生きている。




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