天使は金の瞳で毒を盛る
で、そこから音信不通。と思ったらいきなり現れて婚約者だなんて。ありえない!

私はクッションをまたバシバシ叩いた。

ああ、なんか疲れたわ。思い出し怒りで。

とりあえずクッションを抱え込んでまたごろっと横になる。

…なんで私の前にまた現れたの?お父様に言われたから?お父様は榛瑠にとって、たぶん唯一と言っていい頭の上がらない人だ。

だから?

それとも舘野内家の名は、榛瑠にとってもそれだけ魅力のあるものなのだろうか。

ううん、仕事をするように、そこで過ごして成長した彼にとっては、なおさら…。

…だとしても、私は首を縦に振らない。絶対にありえないんだから。おやつでつってもダメなんだから。榛瑠だけは、絶対。







その夜、ぼんやりと落ちていく意識の中で、誰かのため息を聞いた気がした。

それから、「無防備すぎるだろ」というつぶやきと、優しくひたいに触れた何かを。
< 26 / 180 >

この作品をシェア

pagetop