突然現れた御曹司は婚約者

「将来の旦那をストーカー呼ばわりするなど言語道断。俺の名前は東堂蓮だ。しっかり覚えておけ」


偉そうな言い方に何様なのかと言いたくなる。

そもそも将来の旦那とか、嫁とか、個人情報を知っているとか。

すべてが普通じゃない。

でも『トウドウレン』って、どこかで聞いたような気がする。

どこで聞いたんだっけ?


「もしかしてあんたの父親って、東堂真か?」
「あ!」


牧田くんの言葉で思い出した。

トウドウシンは代々続く資産家、名門東堂家の当主。

彼にはひとり息子がいるはずだけど…


「本当に東堂家の息子なのか?」


たしか、真と親交のある当信用金庫の理事長は跡継ぎである息子と会ったことがあり、元モデルの母親に似たかなりのイケメンだと言っていた。

ただ、私も牧田くんもその姿を見たことがない。

だから牧田くんが言うように目の前の男性が本物かどうかは分からないのだ。


「疑り深いな。まぁ、それは分からなくもないから証明してみせよう」


そう言うと彼はジャケットの内ポケットから財布を取り出し、そこから免許証と名刺を抜き出した。


「免許証の住所、電話番号を控えて確認してくれて構わない。そうすれば親が『真』だと分かるだろうから」
「あ、いえ。そこまでしなくても大丈夫そうです」


渡された名刺に書かれた株式会社の名前。

それはついこの間、理事長に東堂の息子のことが書かれていると言って勧められた経営・マネジメント雑誌に載っていた名称と一致する。

ただ慎重な牧田くんは確認すると言ってスマートフォンを取り出し、調べはじめた。
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