Room sharE
ヤバイ女――――
ようやく取れた松岡と杉崎 亜里沙の交際の裏どりは、予想と反して違う方向へと向かって行った。
「何がどうヤバいんだ」とS氏に聞くと
「さぁ、詳しくは聞かなかったけど、でも……ちょっとした業界の飲み会で知り合ったって。そしたら向こうがかなり本気になったみたいでサ」
「杉崎 亜里沙と松岡の交際の事実は親しい人間も知らなかったことだ。それなのに何故、ほとんど赤の他人のあんたに相談したんだ」
とツッコむと、
「さあな。知らねぇよ。てか、付き合ってなかったみたいだぜ?一方的に付きまとわられてる、とか何とか。
あのときあいつ……ユウキだっけ?相当参ってたみたいで……ああ、そうそう。俺もスケジュールがびっしりだからあいつがレコーディングに遅れてきたときマジで『やる気あんのか』て怒鳴ったら
『後を尾けられた』とか『尾けられてる』とか、言ってたな。最初『着くならもっと上手い嘘を付け』って言ったけどあいつマジで顏が真っ青でさ、ぶるぶる震えてんの。あー……これってマジなヤツ?とか…
正直俺も厄介事とか持ち込まれたくないんでね。聞かなかったことにしようかと思ったけど、でもレコーディングが終わって俺が帰るとき
スタジオの外で待ってたんだわ。
冬華じゃない若い女が」
それ以外にもS氏は松岡から『亜里沙に殺される』だとか随分物騒なことを聞いている。
だから氏は松岡を殺したのはてっきり亜里沙の方だと思っていたようだが、殺したのは冬華だとニュースで知って驚いたらしい。
――――どうゆう……ことだ―――
S氏の証言で、事態が混乱してきた。松岡は冬華と杉崎の二人の女に二股を掛けていた。
それは松岡 優輝のスマホに残っていたメールから一目瞭然だった。
俺はてっきり杉崎 亜里沙の方が本命だったと思ったが
「最後に一つ。冬華は松岡と結婚するって話になってたみたいだが」
そう聞くと
「結婚??あいつ……冬華はそんなこと一言も言ってなかった。何、結婚する予定だったのあいつ」
と逆に聞かれ、
じゃぁ……あの松岡のスマホに残っていた、メール文は……どうゆうことなんだ。