凍り付いた恋心なら、この唇で溶かそう。
恋と欲望の境界線
毎朝同じ時間に嫌というほど聞いているけたたましい目覚ましのアラームに意識を引き戻された。

あれから笑い転げてそのまま眠ってしまったのか。音のなる方へ手を伸ばして手探りにアラームを止めて、顔を上げる。


「……仕事」


行きたくない、と思いながらスマートフォンの画面を確認すると土曜日と表示されていた。

ああ、今日は会社に行かなくていいんだ。

襲ってきた安堵感と眠気に再び枕に顔を埋めると、静かに扉が開く音がした。眠い目を擦って仰向けになると、視界の端にシャワーを浴びたらしい、上半身裸の幼馴染がクローゼットを物色しているところだった。


「おはよう龍也」

「ああ、おはよう」


目当ての洋服が見つかったのか、左右にある洋服を丁寧な動作でよけて白地のロングTシャツを手に取った。

ぼやけた視界がクリアになって、均等にバランスの取れた筋肉質な肉体に一気に頭が覚醒した。


「めっちゃイイ身体してるね」


思わずそう声を上げると、龍也はTシャツを取り落として咳き込んだ。

ジト目で睨み付けられて少しだけ萎縮すると、龍也は息を整えて何事もなかったようにハンガーを外して、そそくさとTシャツに袖を通した。


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