契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

「……栞、身長何センチだ?」

突然、神宮寺から尋ねられる。
いつの間にか、タブレットでスワイプとスライドとタップを繰り返していた。

「えっ?……一六〇センチですけど……」

栞がそう答えると、神宮寺が間髪入れずにさらに訊く。

「……体重は?」

……はぁっ⁉︎

「せ…先生っ、『女子』になんてこと訊いてるんですかっ⁉︎」

しのぶがいきり立った。

「早速、従兄にラインを送ったんだよ。
そしたら、指輪の号数(サイズ)を知りたいから、身長と体重と指の形状を教えろ、って言うからさ。ヤツにはそれで(わか)るらしいんだ」

栞が指輪やネックレスなどのアクセサリーをつけているところを見たことのない神宮寺は、彼女が左手薬指のサイズを把握しているとは、とうてい思えなかった。そして、それは正しかった。

栞が渋々、恥を忍んで体重を告げると、華丸百貨店から口が固くて特に信用の置ける外商部の者が、厳選したリングを持ってこのログハウスを訪れるという話になった。

神宮寺の従兄である小笠原(おがさわら) 武尊(たける)は、中国に進出した店舗の責任者として問題が山積しているうえに、唯一無二の親友が六月に結婚を控えていて、その準備を一切合切「丸投げ」されているため、残念ながらとてもじゃないけれど従弟(いとこ)のために京都(ほんとは限りなく奈良)まで来られる状態ではないらしい。

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