初恋の桜
5.


桜先輩をやっと見つけた次の日。



いつも通り登校すると、何か凄い視線を感じる。



視線の方向を見たが、誰もいない。



…気のせい、か。



ぱっと前を向くと視界にピンク色のカーディガンが見えた。




…桜先輩だ。



これは、挨拶をしてもいいのだろうか。



ものすごく話しかけたい…




よし、うじってねぇでいくぞ!




「さっさく…」



と、言いかけたところでまたもや視線。



あぁ、先輩に声をかけるタイミングを失ってしまった。




ムカつきながら視線の感じた方を見れば、そこに居たのは物凄い形相で俺を睨んでいる、赤いサンダルの男。




うちの学校のサンダルは、学年ごとに色の指定がある。



俺達1年は青で、2年は赤、3年は緑だ。



つまり、俺を睨んでいる男は2年。




…誰?




全く知らない男。



恨まれるようなことをした覚えもない。




「なんすか。」



思いっきってい聞いてみると、男は走り去って行ってしまった。



「なんだあいつ…」



あいつのせいで先輩に挨拶出来なかったじゃねぇか。




男が去った方向をぼーっと見ていたら、後ろから塁が突進してきた。



「おはー!! どうしたんだよ、ぼーっとして。」



「はよ、塁。 なんか知らねー2年の男に睨まれた。」



教室へ向かいながらさっきの出来事を説明する。



「2年の男? お前なんか恨まれるようなことしたんじゃねーの?」



「いや、全く覚えねーよ。」



「お前の事だから女絡みじゃね?」




ああ、女ね。



それならありうる。



昨日フッた女とか、ね。




「めんどいな。 俺のせいじゃねーのに。」



「モテる男は罪ですなぁー!」



「うっせぇよ。 モテんのも結構大変なんだぞ。」



女同士の揉め事やら逆恨み、さらに男の嫉妬とかも。



めんどいことが色々あんだよ。




「うわー、ムカつくわぁ…」



そう言って塁は容赦なく俺に腹パンした。




「いってぇよ!!」 と、叫ぼうとして止めた。



だって、またあの視線を感じたから。



後ろを振り向き、視線の方を見れば、やっぱりあの男。



「おい塁、アイツ。」



「うわ、めっちゃ睨んでんじゃん。」



塁に声をかけて2人で睨み返す。



男は怯えた顔をして逃げていった。




「塁、頼みがあんだけど。」



「了解。学食、デザートも奢れよ。」



「ああ、頼む。」



塁と言葉少なに会話をし、その場で別れた。

< 10 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop