獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「税金を増やして騎士を多量に雇っても、国民から反感を買うだけだ。この国を、ますます駄目にする」


カイルがすごんだ声を出せば、王がよりいっそう冷ややかな目を向けてきた。


「では聞こう。そもそも、この国を駄目にしたのは誰だ?」


まるで背筋を刃で撫でられるような、ぞっとした声音だった。カイルをはじめ、この場にいる全員が弾かれたように王を凝視する。


「王宮内では粗暴の噂が絶えず、あてがった婚約者も次々と粗末に扱う。それに街でも乱暴を働いているそうじゃないか、カイルよ」






殺意すら漲る王の眼力に、カイルは呪縛にかかったかのように動けなくなる。


「お前のせいで、お前の母親は死んだ」


王のその台詞は、鋭い切っ先となってカイルの胸を射抜いた。


「お前のせいで、この国は滅びゆく。我々のせいではない。全てはお前のせいだ、”災いの申し子”よ」






魂がカイルの全身から抜け落ちるように、燃えていた想いが冷めていく。


――災いの申し子。


その言葉は、カイルを黙らせるのは充分すぎる威力を持っていた。


「鎧兜を、なぜ被らなくなった? お前のその呪われた髪色を見るだけで、怖気が立つ」


気力を奪われたカイルに追い打ちをかけるように、王は更に残酷な言葉を浴びせる。


「分かったなら、さっさと出て行け。神聖な場が、汚れる」


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