能ある狼は牙を隠す


苦笑したカナちゃんが、「うちのクラス甘い匂いしてるから気持ちは分かるけど」と付け足した。

私たちのクラスはカフェというだけあって、ワッフルやドーナツ、シフォンケーキなど、軽食を扱っている。
去年は飲食じゃなくて展示発表だったから、先輩たちのクラスに行って甘いものもかなり食べた。


「あ、ここいいじゃん。ライスバーガーだって。和食かどうかは微妙なラインだけど」


悩んで貴重な時間を削るのも勿体ないということで、結局そこに落ち着いた。
幸い物凄く混雑しているというわけでもなく、カナちゃんと二人で教室内の飲食スペースに腰を下ろす。

イベント特有の喧騒を流し聞きしながら、軽く味の感想を言い合いながら。穏やかに食事をしていたところで、カナちゃんがぎこちなくお茶を口にした。


「……ほんとに良かったの、あれ飾っちゃって」


私は一瞬返答に迷って、「うん、まあ」と視線を落とす。

あれ、というのは、犬飼くんが描いた作品のことだった。
彼の詳しいその後は分からないけれど、退部したことは部長の口から部員みんなに伝達された。カナちゃんとはあの日以降、特にそのことについては触れていなくて、何となく今日まで黙っていたのだ。


「あれの仕上げを羊がやるっていうのがまあ、何とも皮肉だけどさ……」

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