【短編】あなたとの距離、近くて遠い

そこは、私が見慣れた景色が広がっていた。眩しい日差しを浴びて、呆然と街を眺めた。でも、何か違った。

「…いつもと風景が違うな」

 私は一人ポツリと言い、見慣れているはずなのに、見慣れない風景に戸惑いを受けた。

 多分、それは外から見慣れている景色だけど。

病院から見る景色は、悲しく一人の世界に放り込められた気分であった。

この気分は、入院している人達もそうなのかもしれない。

正体不明の気持ちを我慢しながらも、病気を治そうと必死なのだと痛感した。

「ふぅ、ベットに戻るか」

 車いすを動かしながら、私はベットに戻ろうとした時だった。
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