【長完】Keeper.l
目の前の男

___私を作った父親を見る。

今度は落ち着いて、聞けた。

「ここが俺の職場だから。お前を特待生として受け入れたのも俺。

俺が居なかったらお前はここに入れなかったんだぞ?

感謝して欲しいなぁ。なぁ、里香?」


___チッ、と舌打ちをする。

だいぶ久しぶりに会った目の前の男。最後に会ったのはいつだろうか。よくわかったものだと感心する。

左目の辺りにある傷。爽やか清潔感のような出で立ちとは随分似合わない傷跡を付けた男、そして自分の顔に似ている男。


ここには、“あの人たち ” の紹介で特待生として半分コネみたいなもので入った学園だ。その時に言われていた言葉。「大丈夫だと思うけど。関わることはないと思うけど、でも落ち着いてね。」それを思い出して納得した。コイツと会う可能性を考えていたのか。

だって普通転校したとて理事長と会うのなんて集会くらいなはずだものね。

「それにしても、久しぶりに顔を合わせて怒鳴られるとは。せっかく、高校どこにも入れないお前を入れてやったのに。

それにしても驚いたよ。

“あの人たち” から、この子を特待生として編入させてくれと言われて資料を見ればお前じゃねぇか。

きっと、“あの人たち”からの頼みじゃなければ断っていたのに。」

そう言って、何が面白いのか クツクツと、喉を鳴らす。

その仕草を見ただけでも不快になる。

小さい頃は、“お父さん”が笑えば自分も嬉しい、と言うほど この男が好きだったのに。

今となってはもう、昔の話すぎる。
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