Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
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「あ、あの」
 戸惑ったような声で、華月がカーテンの陰から顔だけ出した。俺は、座っていたソファから立ち上がる。

「どう? サイズあってる?」
 カーテンを開けると、デニムのホットパンツに赤いニットのトップスを着た華月が、恥ずかしそうに立っていた。お嬢様はこんなの着たことないだろうと、面白半分で選んだ服だけど、思ったより、いい。
 俺がジーパンにボルドーのニットだったから、どうせ買うならと色味を合わせてみた。ただ、華月のニットは、鮮やかなスカーレットだ。

「あってますが、ちょっと恥ずかしいです……」
 消え入りそうな声で言ったその顔まで、真っ赤になっている。

「すごくいいよ。似合ってる」
 言いながら、改めて全身を確認する。

 ニットの胸元は結構大胆に開いていて自然とそこにある谷間に視線がいってしまうし、ニーハイの上の絶対領域は白く眩しい。

 ……うわ。俺すごく変態ぽいな。

「こんな短いの、初めてです」
「とてもかわいいよ、華月」
 耳元で囁くと、ますます華月の顔が赤くなった。これしきのことで赤くなるなら、俺が本気出したら死ぬかもしれん、この子。
 相手は未成年だし、手加減しなきゃな。

「さ、今度はあっちに座って」
 ブーティーを履く華月を急かして、今度は鏡の前に座らせる。タイミングよくあらわれた綾に後を頼んで、俺はまたソファに腰を下ろした。

 こんな時間でも、この美容室は数人の客がいた。今日は休前日だし、これからデートにでも向かうのかもしれない。
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