Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
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 広い和室には、座卓をはさんで男女五人が座っていた。新しい振袖に身を包んだ華月を挟んで両親が、その向かいには、華月の両親と同じ年頃の男女が対面している。華月の前の席だけが、主のいないまま空席となっていた。

 BGMは微かな琴の音。天気は快晴。ししおどしの音が聞こえないのが残念なほどの、見事な見合いの席だった。

「本当に、お美しいお嬢様だ。一之瀬様は、ごりっぱにお育てになられた」
「おそれいります」
年配の男が言って、華月の父親……一之瀬武彦が頭をさげる。そんな親の隣で、華月は、じ、と視線を俯けたまま動かない。

 まっすぐな黒髪に白い頬、真っ赤な紅をひいた唇。その姿は、まるで日本人形のように美しかった。

 ボディーガードに連れられて帰ってくるまでの間のことを、両親は何も聞かなかった。いっそ、聞いてくれれば、自分の本当の気持ちを話すことができるのにと華月は思うが、何も聞かないのも自分を思いやっての事だろう。
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