Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
 もちろん、華月とて二人のことは大切に思っているし、なにもわざわざ失望させるためにこの席へ来たわけではない。
 席に着くまで、いや着いてからも、華月は迷っていた。岡崎に、医大へ進んでほしいと言われてさらに心は揺れた。
 華月が黙って岡崎に嫁げば、それでうまく収まる話だ。
 けれど……

「医大進学をあきらめた時から、私はずっと後悔していました」
 は、と二人は華月の言葉に息をのむ。
「お父様とお母様が、私の幸せを何より考えてくださっているのはよく知っております。このお話を喜んで受けると言った時の私の言葉にも嘘はありません。でも」
 二人を傷つける言葉とわかっていても、華月はそれを止めなかった。

「私は、恋をしてしまいました。生まれて初めての恋を、あの方に、教えていただいたのです」
「華月……」
「そしてもう一つ。後悔するということは、どういうことなのかということも」
 顔をあげて二人を見つめると、華月は続ける。
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