【完】キス・フレンド


これは先輩が卒業後、知った事実である。
先輩には婚約者がいたそうだ。
いわゆる政略結婚というもので。
先輩が卒業と同時に、その相手とふたりは結婚した。
その事実を私は、先輩が結婚後1年後に知った。


そしてその時、先輩が残した痕が熱くなった。
髪・耳・喉・首・そして唇。


気になった私は、調べた。
そして私は、4度の大きなキスの意味を1年越しに知ることになる。


あの時から先輩は私に伝えていたのだ。
先輩の、最後の想いを。悲鳴を。
本当の先輩の願いを、私の身体に刻み込んでいた。


『髪の毛へのキスは、思慕。』


『耳へのキスは、誘惑』


『喉元へのキスは、欲求』


『首元へのキスは、執着』


先輩は、キスの場所で私への想いを伝えてくれていた。
キスフレンドなんてそんなものは形でしかなくて。
もっと深く、先輩の本心はここにあった。
最初から、私の事を、想って……。


もしこの暗号に私が気付いていたなら。
未来は変わっていたのだろうか?
先輩の隣でウェディングドレスを着ていたのは、私だったのだろうか?


1年越しに告白を受け取り、私は1年越しに失恋した。
叶うとともに失恋する。
恋する相手はもう、他の女の人のもの。





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