火遊び
序章
両親は二人とも不動産仲介会社の代表取締役。都立高専に通う兄と進学校に通う2つ下の妹は、驚くほどに仲が良く、無論、家族仲も良好で何の問題も無し。
都内の戸建てに四人で住み、今年で妹は16になった。

…これだけ聞けば、16の妹は愛する家族に囲まれ、将来への不安も無くで順風満帆な日々を送っていると思われるだろう。
しかし、人生はそう甘くは無い。


実際の妹は、親の過保護に苦しめられ、将来に希望も持てず、丁度今…
リストカットに勤しんでいた。


(あー…微妙に痛い)
元から痛みの感覚に鈍い自分の体は、切った腕の感覚を上手く拾ってはくれない。腕に付いた数々の傷は一月前の12月から刻まれたもので、まだ新しく、完全には消える気配が無い。

丁度、鬱病と診断されたのもそのくらいの時だった。
前々から精神を病んでいた自分が、母親に通わされていた病院で、初めて鬱だと診断されたとき。やっと付いた病名に安堵したのを覚えている。
明るく笑う自分を誰も病気だとは思わない。それがやっと、自分は病人だと言えるのだ。下手な詮索はされない。あるのは形だけの同情のみ。自分にとってはそれが何よりも嬉しかった。

カッターの刃を閉まって、ペン立てに戻す。腕の傷はティッシュで抑えて、血が止まるまで待っている。
ここ数日、家からも出ずに充電器に差したままのスマホを手に取ると、また沢山の連絡が来ていた。

(ヒロキさん、ナツさん、リュウセイさん、タクマさん、ユウトさん…それから、フユキさん)


軽い気持ちで始めた出会い系アプリが、日課になったのはいつ頃だろうか。
『18歳JKリカ』
偽りの自分に愛の言葉を囁き、アプローチをかける20代の男達。実際に会うことも数回あったが、総じて面白くも何ともなかった。大体は食事して話して解散。一度、セックスに誘われそうになったが、正直気乗りしなくて、上手く逃げたのは、いつの話だったか、もう覚えてすらいない。

そして、明日もまた一人会うのだ。もうほとんど日課になっている男漁り。放課後でも休日でも、音楽さえやっていなければ男を漁りに出掛ける。
私にとってこの趣味は、何の変鉄もない日々の最高のスパイスになっていた。
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