彼は私の全てだった
poison
何があってもシュウと離れることは出来ない。

私は結果的に嘘をついてしまった。

別れを言いに行ったのに
私は結局シュウから離れられなかった。

彩未になんて言おうか悩んだ。

ところが次の日、彩未は仕事に来なかった。

そして部屋にも帰って来なかった。

彩未は親のコネで入社したために
このセクハラでっち上げ事件が両親にばれて
家に連れ戻される結果になってしまったようだ。

彩未は親と一緒に退職届を出しに来て
部屋の荷物はその日のうちに業者さんが片付けにやってきた。

思ったよりコトは大きくなってしまった。

中村さんはもともと上からの信頼も厚く
今回の事件は皆が何かの間違いだろうと
ハナから彩未を疑っていたようだった。

結局、シュウの計画は失敗に終わったのだが
シュウは何事も無かったように平然として暮らしている。

バカを見たのは彩未だけだった。

私は彩未に嘘をついたまま
シュウと時々会っていた。

そんなある日、彩未が突然、私を訪ねてきた。

「約束守ってね。

シュウちゃんから手を引くって約束したよね?」

そう言われると返す言葉もない。

「シュウとは…まだ?」

私がそう聞くと彩未は言った。

「そんなこと関係ない。

シュウちゃんとはもう逢えないけど…
アンタだけは許さない!」

私は今にも彩未に顔を殴られそうで怖かった。

それでも私は彩未に話した。

「シュウとは離れられない。」

「騙したの?」

「どう思われても仕方ないけど…」

その時思い切り頰を打たれて
目の前にチカチカと銀色の紙吹雪のようなものが見えた。



< 46 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop