* KING+1 *
アパートを出て、先輩の後ろをついていた。


チラリと1度だけこっちを見た先輩が 私の手を無言で掴んで スタスタと歩く…。


これって、これって───?
やっぱりデートだよね?


先輩照れちゃって、心なしか足取りが早い?
顔を見たくて 小走りで先輩に追い付き 横顔を覗き見た。


「この地域は危険だから、ボヤボヤするな。気を引き締めて歩け。お前ボォとすぐするからスリにやられるぞ…。」


えっ、まさかのマジ?
先輩からの子供扱いにショックで
ガクッと気持ちが瞬時にブルー。


そうだよね…
私も薄々おかしいとは思ってはいたんだ…。


先輩が私の彼氏になることって、やっぱり夢の中でも 100%くらいあり得ない事なんだろうと思うと、今の状況も満更捨てたもんじゃないと 笑える私がいて気持ちが軽くなった。

メトロを乗り継ぎ、向かった場所は…1度は訪れたいと思っていた ルーブル美術館だった…


「先輩が神に見えます。私どうしちゃったのかな?」

「おい、それ褒めてる風で全然嬉しくないんだけど?ルーブル美術館は 最高だぞ…。言葉はいらない。行くぞ…。」


テンションが上がる私は 先輩が横にいる事も忘れて 心を解放し過ぎたんだと思う…。

ここは日本ではないのに、言葉も余りイヤ全然理解出来ない癖に 迷子になった事すら気付かないで 夢中で沢山の絵画を堪能していたのであった…。


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