たまゆらなる僕らの想いを


──それは、ナギのお祖母さんの葬儀も終わった翌月のこと。

ナギとヒロは、友人の家に一緒に出かけた帰り道を歩きながら、今後どうするのかを話していたらしい。

ヒロはもちろん家業を継ぐと話して。

ナギは祖父母の残した神社を継ぐのだと、ヒロは思っていた。

けれど、ナギの口からは別の言葉が出てきた。


『俺は、神社は別の人に託そうと思う』

『……託すって、手放すのか?』

『ああ。それで、島を出る』


決めたと言い切ったナギに、ヒロは反対したらしい。


『お前、頼まれてたんだろ? お祖父さんとお祖母さんに、神社をよろしくって』

『そうだな。でも、決めたんだよ』


卒業したら島を出るのだと譲らないナギ。

そんな彼を、ヒロは認められなくて。


『無責任だろ。約束したんだから果たせよ』


強い口調で責めると、ナギは『お前にはわからないだろ』と言い放ったそうだ。

「ただいま」と言える家族がいるヒロにはわからないと。

何も言い返せずに立ち止まったヒロを、ナギは振り返った。


『ここに、俺の居場所はもうないんだ』


後ろ歩きで、悲しい言葉を残した直後。


『ナギ!』


ナギは、猛スピードで歩道に乗り込んできた車に跳ねられた。

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