熟恋ージュクコイー
「あ、あの…」

返事に困っていると田中さんは私の手を握って話した。

『突然困らせてしまってすみません。言わずにはいられなくて…すぐにどうこう、ではなく、また今日のようにご飯を食べたり、お酒を飲んだりしましょう。』

「は、はい…」  

『ただ、どうやら私は真野さんに恋してしまっているようで。年甲斐もなく、とか言わないでくださいね。真野さんにも、私に恋してもらいたいなと思っているので…』

え、え〜!!!!

うわ、心臓が口から出そう…
だめだ、言葉が出ない。

『驚かせてごめんなさい。でも私の本心です。』

そこからは無言で駅まで歩いた。

田中さんの手だけは、私の手を握ったままだったけど…
離すに離せなくなり…気付いたら駅までそのまま。

駅に着き、やっぱり心配だからタクシーで送ります。と言う田中さんに、大丈夫、ちゃんと帰りますから!と話して、やっと電車に乗り込んだ。

ちょっと1人になりたい。

帰りを心配されるなんて、慣れないし、恋されるなんて、もっと慣れない。

家に着き、チャットでお礼と無事に帰った旨連絡しておいた。

『田中さん、今日はご馳走さまでした。先ほど無事に家に着きました。』


するとすぐに返信が来た。

「無事に着いて良かったです。また会いたい。次回は送ります」

恋してる、とか、また会いたい、とか…

そんな事を言われて、少し浮かれている自分を、亡くなった夫は空からどう見ているのだろう…悲しい顔、してないかな…?

家に帰ると1人で、急に静かな時間が訪れた。

シャワー浴びて、さっさと寝よう。
それがいい。

1人だと考えなくて良いことまで考えてしまうから。
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