次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
ぎこちなさを残しつつも、もちろんすぐにリリアも姿勢を低くし、挨拶するように顔を伏せる。
「エルシリア様。大変失礼いたしました」
王妃がふたりの前で立ち止まった気配は感じるものの、セドマの謝罪に対し何の言葉も返してこないことを不思議に思い、リリアはそろりと目線をあげる。
すると、待ち構えていたのか、すぐに王妃と目が合った。
びくりと体を強張らせつつ、リリアは先ほどよりも深く頭を下げようとしたが、それを咎めるかのように静かで迫力のある王妃の声が響く。
「ふたりとも、頭をあげてちょうだい」
リリアは観念し姿勢を正した。
じっと注がれる王妃の視線に鼓動が嫌な高鳴り方をし始め、気持ちの乱れを悟られたくなくて、ぐっと拳を握りしめる。
「お母さまがどうとか聞こえましたけど……いったいどんな方なんですの? わたくし、とっても興味があるわ。詳しく教えてくださらないかしら」
王妃が問いかけたのは、やはりリリアにだった。
有無を言わせぬ目力の強さに負けそうになるが、幸いにも先ほど父から母に関して忠告を受けたばかりだったため、リリアは決して口を開かなかった。