次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
身体を強張らせたまま動かなくなってしまったリリアの前へと、セドマが大きく進み出た。
「興味を持っていただくことも恐れ多いほど、どこにでもいる、ごく普通の民でございます」
「……そう」
セドマと王妃が向かい合うと、その場の空気が一気に張りつめていく。
リリアはセドマに隠れるようにして黙って立っていると、パタパタと靴音を響かせてアレフが走り寄ってきた。
アレフは慌てた様子だったが、不意にその場に足を止めて王妃へと恭しくお辞儀をし、続けて「セドマさん!」と大きく呼びかける。
セドマもすぐに「今行きます」と声を返し、アレフと同じように王妃へと折り目正しく頭を下げた。
「申し訳ございません。私どもオルキス様をお待たせしてしまっておりますゆえ、これにて失礼いたします」
言い終えるとすぐに、セドマはリリアの腕を掴み、少し距離を置いて自分たちを待っているアレフの元へと足早に進み出す。
上手く一歩目が踏み出せず足元をよろめかせながらも、リリアは王妃の横を通りすぎ、そして王妃の後ろに控えていた従者たちへと無意識に目を向け、思わず息を止めた。