次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
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「オルキス様……本当に良いのですか?」
澄んだ青空の下、城の庭園の中に設けられたテラスで、リリアは椅子にちょこんと腰掛けたまま、優雅に紅茶を飲んでいるオルキスを上目遣いで見た。
オルキスとリリアの間にある円形の白いテーブルには紅茶だけでなくお菓子も並べられていて、さっきからずっと甘い香りがリリアの鼻腔をくすぐっている。しかしどうしても、手を伸ばす気にはなれなかった。
「私は本当にもう大丈夫です。落ち着きました……だから」
早く王様の所にと続けようとしたが、オルキスに焼き菓子を口元へと押し付けられ、邪魔をされてしまう。
「いや。まだ駄目だ」
「ほら」と促され、リリアは素直に口を開く。反論したい気持ちをぐっと堪えて、押し込まれた甘い焼き菓子をもぐもぐと食べ始めた。
王様に呼ばれ城へと戻ってきたはずなのだが、なぜかオルキスは城内に入ることはせず、そのままリリアを庭園の中へと連れてきたのだ。
王子が戻ったこと聞き付けすぐに飛んできたマルセロへと、オルキスは迷うことなくお茶の準備を命じた。
そして、戸惑う侍従たちを代表するように「王様がお呼びですが」とマルセロが申し出ると、オルキスは華麗に笑って答えた。