次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
「あとで行く」だから、「俺が戻って来ていることは、父上の耳に入れるな」と。
唐突に始まったお茶会の目的の一つを、リリアの気持ちを落ち着かせたいからとオルキスは言った。
実際、リリアには十分すぎるほどの効果があった。
紅茶を飲みながら、ぽつりぽつり言葉を交わしているだけで不思議とリリアの手の震えは治まり、波立っていた気持ちも徐々に凪いでいく。
もちろんそれはオルキスの存在があってのこと。
揺るがぬオルキスの優しい眼差しに、自分が大切に思われていることがしっかりと伝わってきて、自然と心が温かくなるからだ。
他にも、アレフが戻ったらとか、ボンダナが到着するのに合わせてなど、何かと理由をつけて、王の元へ参ずることをオルキスは先延ばしにする。
やってきた侍女に苦笑いで対応した後、マルセロは陶器のティーポットを片手にテーブルへと戻ってきた。
「なんらかのお考えがあってのことだとは思いますが、せめて、待ち人はアレフだけとしていただけないでしょうか? 王様が待ちわびていらっしゃいます」
紅茶をオルキスのカップに注ぎながら、マルセロは困り顔でそんな提案をする。