次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
遠慮なく焼き菓子へと手を伸ばし、美味しさを噛みしめるように咀嚼した後、再びティーカップを掴み上げ、幸せそうに紅茶を飲む。
そんなボンダナには、オーブリーのような気味の悪さを全く感じないことに、リリアはホッとしていた。
それどころか、余計な緊張が解けた途端、ボンダナが皆に慕われていることがしっかりと見えてくる。
ボンダナが話をしていると徐々に人々がテーブルに集まり出し、耳を傾け相槌をうったり、時には笑い声があがったりと、場が和やかな空気に包み込まれていく。
相談ごとと共にボンダナに泣きつく女性や、以前もらった助言で物事がうまくいったことへの御礼を口にする男性、そして多くの者はただ静かに敬慕の念のこもった眼差しを向けていて、ボンダナもそのひとりひとりに応えるように、優しい光を宿した瞳を向ける。
「導師様、王もあなたが訪ねて来ることを望んでおられます。どうぞこのまま、王の元へと足を向けてくださいますよう」
出来立ての焼き菓子をテーブルに置きながらマルセロが囁きかけると、ボンダナは気だるげな顔をしてみせた。
「そう焦るでない。王の元へ行ってもむさくるしい男どもしかおらん。今は可憐な花を眺めながら、心行くまでお茶会を楽しみたい気分だ」