次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

着古した感のある外套や、そこに枯れ葉や土などが付着していたりなど、老婆の姿はジャンベル城の華やかさの中で完全に浮いていた。

しかし、一見風変りにも見えたとしても、目と目が合ってしまえば、その目力の強さに容易く畏縮させられてしまう。

にやりと笑いかけられたことで、胸の高鳴りすら見抜かれてしまっているように感じ、リリアは戸惑い気味に老婆から視線を外す。

初めて見る老婆であるけれど、彼女が誰なのかリリアにはなんとなく予想がついた。

そしてその予想は、オルキスの一言によって真実に変わる。


「ボンダナ。来ていたのか」

「薬草が欲しくてな、庭に入らせてもらおうと思って来たのだが、楽しそうなお茶会が目に入ってしまっての。わたしも仲間に入れてもらおうか」


ボンダナは嬉々とした様子で、椅子へと腰を掛けた。オルキスはテーブルに頬杖をついて、瞬きを繰り返しながらボンダナを見つめる。


「その様子じゃあ、父上からお呼びがかかっていることを知らなそうだな」


マルセロが準備した紅茶を早速すすり飲んだ後、ボンダナが「あ?」と素っ頓狂な声を上げた。


「そんなことは知らん……でもまぁ、そろそろ呼ばれるだろうと思っていたが」



< 160 / 224 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop