次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
着古した感のある外套や、そこに枯れ葉や土などが付着していたりなど、老婆の姿はジャンベル城の華やかさの中で完全に浮いていた。
しかし、一見風変りにも見えたとしても、目と目が合ってしまえば、その目力の強さに容易く畏縮させられてしまう。
にやりと笑いかけられたことで、胸の高鳴りすら見抜かれてしまっているように感じ、リリアは戸惑い気味に老婆から視線を外す。
初めて見る老婆であるけれど、彼女が誰なのかリリアにはなんとなく予想がついた。
そしてその予想は、オルキスの一言によって真実に変わる。
「ボンダナ。来ていたのか」
「薬草が欲しくてな、庭に入らせてもらおうと思って来たのだが、楽しそうなお茶会が目に入ってしまっての。わたしも仲間に入れてもらおうか」
ボンダナは嬉々とした様子で、椅子へと腰を掛けた。オルキスはテーブルに頬杖をついて、瞬きを繰り返しながらボンダナを見つめる。
「その様子じゃあ、父上からお呼びがかかっていることを知らなそうだな」
マルセロが準備した紅茶を早速すすり飲んだ後、ボンダナが「あ?」と素っ頓狂な声を上げた。
「そんなことは知らん……でもまぁ、そろそろ呼ばれるだろうと思っていたが」