次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
「……もしかして戻らないって断りに行くの?」
アレグロの言葉から想像し、セドマは王都に仕事をしに行くというよりは、そこにいる誰かにきちんと断りに行くつもりなのかもしれないとリリアは考えたのだ。
セドマはじっとリリアを見つめ返した後、ぽつりと答えを口にする。
「……あぁそうだ」
自分はこんなにも王都に焦がれているというのに、父にとってはそれほどまで離れたい場所なのかと、また少し自分の手から王都が遠ざかってしまったような気持ちにさせられる。
リリアは唇をわずかに噛み、膨らんでいく切なさを堪えた。
「セドマ。お前が王都から離れるかどうかはお前自身で決めればよい。しかし、リリアの未来の芽まで摘み取ることをしてはいけない。リリアが会ってみたいと望むならば、わしが王都に連れて行き、王子にお目通りを願い出よう。リリア、お前本当はどう思っている?」
「アレグロ村長!」
リリアをまっすぐ見つめて問いかけるアレグロへと、セドマが唸るような低い声を上げる。
「……私は」
王都への憧れの気持ちが喉元までせり上がってくるが、苦しそうなセドマに気付いてしまえば、その先を言葉にすることに対してリリアの中で躊躇いが生まれる。