次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
表情を強張らせ口を閉じてしまったリリアへと、アレグロは僅かに目を輝かせていたずらっ子のような顔を向ける。
「第一王子とは幼いころに一度だけ会ったことがあるが、とっても綺麗な顔をしておったぞ。どうだ? 興味はあるのだろ? 実物を一目見てみたいと思っているのだろ?」
楽しそうに言葉を並べるアレグロに、今度は違う意味でリリアは表情を強張らせる。
リリアにとって第一王子は雲の上の存在でしかなかった。
王都への強い関心はあっても、そちらに意識を向けることはあまりなかったのだ。
しかしアレグロにけしかけられたことで、はじめて王子への好奇心がちらりと顔を出す。
「……そんなに美しい方なんですか?」
「あぁ。あのまま成長しておれば、かなりの美丈夫になっておるだろうが……そうなっておるか? セドマ」
にやり笑ったアレグロを横目で見て、セドマはほんの一瞬憂鬱そうに瞳を閉じ、そしてこくりと頷いた。
「顔は良いが、小生意気だ」
父の答えを聞き数秒後、リリアは息を飲む。
この村で王族に会ったことがあるのは、村長夫妻だけだと思っていたのだが、実際はそうではなかったのだ。