次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
すると、近衛兵をふたり相手にしているアレフの後ろに身を潜めていたボンダナも、オルキスへと顔を向けた。
「オルキスよ!」
そして呼びかけると同時に、何かを放り投げてきた。
掴み取った手の平に収まるほどの小瓶を見つめながら、オルキスは力強く言った。
「王座などくれてやる。運命の乙女でなくても構わない。彼女と共に生きて行けたらそれでいい。俺はリリアを愛している」
オルキスは蓋を開け、小瓶の中で揺れ動いている黄金色に輝く液体を己の口へと一気に流し込み、そのままリリアに口づけた。
こくりと喉元が動くと、床へと落ちてしまっていたリリアの手がゆっくりと上昇し、触れたオルキスの腕をきゅっと掴んだ。
「おのれ! 早くオルキスを捕えろ!」
「やめないか!」
焦りを交えて王妃が叫んだ瞬間、広間に低い声が響き渡り、皆の驚きの眼差しが王へと向けられる。
「オルキスは私の後を継ぐもの。それでも刃を向けようとする者は、みな罪人とみなし処す」
凛とした声音で告げながら、王が歩き出す。
「わたしの言葉が聞こえぬか? 決定が気に食わぬと言うなら、今すぐ国を去ってもらって結構だ」