次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

そのためジャンベル城に今、王妃の姿はない。

やつれた顔で城を出て行った王妃の後ろ姿はリリアには頼りないくらい小さく見えて、好意は抱けないというのに、切なく感じてしまった。

アレフが、もしかしたらオーブリーはエルシリア王妃について行ったのではないかと考えを述べると、それに対しオルキスが「とっくに見張り役を送り込んでいる」とさらりと言ってのけたのだった。

そしてリリアがセドマから聞かされたのは、昔話だった。

ソラナは快活なだけでなく、人のために行動ができる優しさと勇気も持ち合わせていた。そこにいるだけで場が明るくなり、まるで太陽のような女性だったとセドマは言う。

そしてボンダナの娘なだけあって未来を見越した助言をし、力も貸そうとすることが多かったため、人々からの信頼は厚かった。

そんなソラナに、若き頃の王は恋心を抱いた。

しかし思いを口にしても、彼女が首を縦に振ることはなかった。

高価な贈り物をしても、王妃の座をちらつかせても、ソラナを手に入れることができなかった王は、強硬手段に出た。

権力を振りかざし、勝手にソラナとの婚姻を結んでしまったのだ。


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