次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
しかしすぐにリリアは小さく声を上げフードを外してから、もう一度改めて、マルセロに対してお辞儀をした。
「失礼しました」
自分の髪の色を晒すことに抵抗はあったが、この場でフードを被ったままでいることは礼儀を欠いていると考えたのだ。
案の定、マルセロはリリアを見て目を丸くさせ、口を半開きにさせたままオルキスへと目を向ける。
「連れて帰ったのはセドマだけではなかったようですね。まさかの……」
それ以上言葉にはせず、マルセロはおもむろに口を手で覆ってみせた。
「ふたりとも大切な客人だ。丁重にもてなせ」
言いながらオルキスはリリアの背に手を添え、そしてセドマにも視線を向け、共に先へと進むように促した。
けれど歩き出してすぐに、オルキスは思い出したように振り返る。
「それから、今宵の食事はこのふたりととりたい」
「かしこまりました。そのように準備させます」
恭しく頭を下げたマルセロへと満足気に頷き返してから、オルキスはリリアに小声で話しかけた。
「部屋も用意させる。明日のためにゆっくり休め」
歩を進めながらリリアもオルキスを見上げ、たどたどしく問いかける。