次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
「明日、ですか?」
「あぁ。一緒に町に出よう」
嬉しい誘いにリリアはパッと表情を明るくさせ、ついいつもの調子でオルキスに抱きつこうとしたが、隣にいるその人が誰なのかを思い出し、動きを止める。
伸ばしかけた手をゆっくりと自分の胸元へと引き戻し、そっと頭を下げた。
「オルキス様、感謝申し上げます」
さっきまでとは別人のようによそよそしい言い草に、オルキスは小さく息を吐きつつも、「こっちだ」と居城に続く回廊へとリリアをいざなった。
興味津々に辺りを見回しながら、緩やかに曲がりくねった通路を進んでいたリリアの目の前に、分かれ道が現れる。
五人は、一つの塊となって右側の通路を進んでいく。
オルキスは左へと伸びた通路には目もくれなかったが、見るもの全てが物珍しいリリアは別だった。
左の通路の先に礼拝堂のような建物があることに気が付き、我慢できない様子でちらちらと目を向けるリリアに、オルキスはふっと笑みをこぼす。
「落ち着け。あとでゆっくりと連れて行ってやるから」
呆れているようにも聞こえる声でオルキスに諭され、リリアは一瞬で頬を熱くさせる。