惚れ薬
スキップしたい気分になっていた時、前方から遼太郎が歩いてくるのが見えた。


こんな気分がいいときには見たくない顔だった。


何も言わずに隣を通り過ぎようとした、その時だった。


遼太郎があたしの前に立ちふさがったのだ。


「……なに?」


ニヤニヤと嫌らしい笑顔を浮かべている遼太郎へ向けて、あたしはそう聞いた。


声は自然と険しくなってしまう。


あたしはやっぱり遼太郎の事が嫌いだ。


「ちょっと話があるんだけど」


「あたしはあんたと話す事なんてなにもない」


キッパリとそう言い切ったのに、遼太郎は笑みを壊さない。
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