惚れ薬
☆☆☆

宏樹は昼休みになるといつも図書室へ向かうらしい。


周囲がのんびりとご飯を食べている中、宏樹だけはスピードが速い。


さっさと食べきって1人で教室を出て行ってしまった。


「ちょっと、遼太郎」


あたしはご飯を食べている最中だった遼太郎を呼び寄せた。


遼太郎は嫌な顔1つせずに、すぐに駆けつける。


「な、なに?」


あたしと会話することに緊張しているのか、背筋がピンと伸びている。


「気が付かれないように宏樹の飲み物にこれを入れてきて」


あたしはそう言い、ペットボトルのキャップに薬を一滴垂らして遼太郎に渡した。


万が一のことを考えて小瓶ごとは渡さない。


「わかった」


遼太郎は躊躇することなくそれを手に取り、立ち上がった。
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